京都地方裁判所 平成6年(行ウ)26号 判決 1997年4月18日
京都市北区紫竹竹殿町八番地の八
原告
京洛観光企画株式会社
右代表者代表取締役
佐藤喜久子
原告訴訟代理人弁護士
村田敏行
同
水野武夫
同
篭池信宏
京都市上京区一条通西洞院東入元真如堂町三五八番地
被告
上京税務署長 上田吉彦
右指定代理人
種村好子
同
石井洋一
同
谷口幸夫
同
高橋孝志
同
森和雄
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
被告が、原告の平成元年一一月一日から同二年一〇月三一日までの事業年度の法人税について、平成三年一〇月三一日付けで原告に対してした法人税の更正処分のうち所得金額七四七二万九三四三円(納付すべき税額二八〇三万三八〇〇円)を越える部分並びに過少申告加算税及び重加算税の各附加決定処分(ただし、いずれも別紙2の裁決欄記載の裁決によって取り消された部分を除く。)を取り消す。
第二事案の概要
一 請求の類型(訴訟物)
本件は、被告がした、原告の平成元年一一月一日から同二年一〇月三一日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件各処分」という。)に、原告の所得金額を過大に認定した違法があると主張して、原告がその一部(確定申告額を超える部分。ただし、別紙2の裁決欄記載の裁決により取り消された部分を除く。)の取消しを求める訴訟である。
二 前提事実(争いのない事実)
1 原告は不動産賃貸業等を営む株式会社であり、いわゆる青色申告法人である。
2 原告は別紙1(売買不動産明細書)の<1>ないし<15>記載の各土地建物を所有し、これを株式会社古知谷(以下「古知谷」という。)に賃貸し、古知谷が同不動産において旅館業を営んでいた。
3 本件売買契約の成立
原告及び古知谷は、平成元年一一月二八日、株式会社サン・コウエイ・デベロッパー(以下「サン・コウエイ」という。)との間で、別紙1記載の各土地建物等(以下「本件不動産等」という。)を同社に代金六億円で売り渡す旨の契約(以下「本件売買契約」という。)をした。
なお、本件売買契約書(乙1の1)の特約条項の覚書(乙1の2、以下「本件覚書」という。)には、右の代金の内訳が次のとおり記載されている。
(一) 土地 四億三〇〇〇万円
(二) 建物等 一億二〇〇〇万円
(内訳)
(1) 建物 四一三六万一一五九円
(2) 建物付属設備 一七五六万七三三三円
(3) 構築物 五〇〇〇万円
(4) 什器備品 一一〇七万一五〇八円
(三) 営業権 五〇〇〇万円
4 本件各処分等の経緯
(一) 原告は、本件事業年度の法人税について、青色の確定申告書に別紙2の確定申告欄記載のとおり法定期限内に申告した。
(二) 被告は、被告の部課職員の調査に基づく、平成三年一〇月三一日、原告に対し、本件事業年度の法人税について、別紙2の更正・決定欄記載のとおり本件各処分をした。
(三) 原告は、(二)の処分を不服として、平成三年一一月一一日、国税通則法七五条四項一号により異議申立てを経ないで、国税不服審判所長に対し、別紙2の審査請求欄記載のとおり審査請求をした。
(四) 国税不服審判所長は、(三)の審査請求に対し、平成六年六月二四日、別紙2の裁決欄記載のとおり本件各処分を一部取り消す旨の裁決をし、右裁決書は、平成六年七月二三日、原告に送達された。
三 争点
本件各処分に原告の所得金額を過大に認定した違法があるか。
特に、平成二年一月二六日に、原告主張のとおり、原告、古知谷(及び同社の株主)とサン・コウエイの間で本件売買契約の内容を次のとおり変更する旨の合意(以下「本件変更合意」という。)が成立したか。
<1> 原告は本件不動産等をサン・コウエイに対し四億三〇〇〇万円で譲渡する。
<2> 古知谷は、原告代表者である佐藤喜久子(以下「喜久子」という。)ほか五名の債権者に対する一億八〇四六万五二六七円の債務の返済のため、サン・コウエイから一億七〇〇〇万円を借り入れる。
<3> サン・コウエイは、<2>の弁済資金を貸す代償として、古知谷の株主から同社の全株式を無償で譲り受ける。
第三争点に関する当事者の主張
一 被告
1 本件変更合意の存否について
本件変更合意は存しない。このことは以下の事実からしても明らかである。
(一) 本件変更合意を証する書面は存しない。すなわち、平成二年一月二六日(以下「本件取引日」という。)に、本件変更合意を証する書類のみならず、サン・コウエイから古知谷に対する賃金一億七〇〇〇万円の借用証も、本件変更合意に関するメモも作成されていない。
(二) 本件取引日である平成二年一月二六日は、本件売買契約の内容を変更するために改めて設定された日ではなく、本件売買契約に基づく取引内容を履行するため本件売買契約書によって予め設定されていた日にすぎない。
本件変更合意の内容は、本件売買契約の契約当事者の変更、譲渡価額の大幅な減少、その代わりにサン・コウエイから古知谷に多額の貸付を行うなど本件覚書の範囲を超えて契約内容を大きく変更するものであり、そのためにかなり細部にわたる検討を要するものであることは明らかである。しかるに、本件変更合意について当日話をしたのみで、かつ、メモをすることもないままサン・コウエイの代表取締役である佐藤東一(以下「東一」という。)の了解を得られたとは到底考えられないから、原告の主張する本件変更合意の成立の過程は不自然である。
(三) 原告が本件取引日から一年以上も経過した平成三年になってからサン・コウエイに対し本件変更合意のような内容の申し出をし、これを拒否された事実がある。
(四) 本件取引日においては、原告の代表取締役である喜久子らから残代金五億四〇〇〇万円の支払方法に関し額面三億七〇〇〇万円と額面一億七〇〇〇万円の二枚の小切手にしてほしいとの申し出がされ、東一がこれに応じた事実があり、原告はこれを本件変更合意の存在の根拠の一つにしているが、これは喜久子らが古知谷に対して一億七〇〇〇万円の債権を有しており、本件売買契約の売買代金の中から返済を受けようと考えていたことによるものにすぎない。
また、東一が本件変更合意の内容に沿った会計処理のなされている古知谷の会計帳簿を受領した事実はあるが、同人は受領直後、右帳簿の作成者である加藤定税理士(以下「加藤税理士」という。)に対し、右の点について抗議したものの、同税理士から訂正を拒まれたため、決算処理の必要上やむなく帳簿として引き継いだものにすぎないから、原告が主張するようにサン・コウエイが貸付金の取引の存在を認めたわけではない。
2 所得金額及び法人税額等の算出根拠
(一) 所得金額 一億七七二七万六七六八円
本件不動産等の売買に関しては、1のとおり原告が主張する本件変更合意は存しないから、本件売買契約の本件不動産等の譲渡価額は、前記第二の二3のとおり六億円である。
そうすると、原告の申告所得金額には、以下の(2)及び(3)のとおり計上漏れがあるから、(1)の申告所得金額にこれらを加算した金額が本件事業年度における原告の所得金額となる。
(1) 申告所得金額(争いがない。) 七四七二万九三四三円
(2) 固定資産税売却益の計上漏れ 九五三九万二九五四円
次のア及びイを合計した金額。
ア 建物等の譲渡価額 五一六一万〇二〇八円
前記第二の3(二)の建物等の譲渡価額一億二〇〇〇万円は、本件覚書上、原告及び古知谷に区分されて記載されていない。そこで、別紙3のとおり、原告及び古知谷のそれぞれの帳簿価額の合計額に占める当該物件の割合を乗じて原告に帰属すべき譲渡価額を算出すると右のとおりになる。
イ 「営業権」の譲渡価額 四三七八万二七四六円
本件覚書上、前記第二の二3(三)の「営業権」の譲渡価額として記載されている五〇〇〇万円の実質は、古知谷の業種、業態及び事業規模等から判断して、単に本件不動産等の譲渡価額の一部であると評価すべきである。
したがって、別紙4(1)記載のとおり、原告及び古知谷のそれぞれの土地及び建物の譲渡価額の割合を乗じて原告に帰属すべき譲渡価額を算出すると右のとおりになる。
(3) 未収利息の計上漏れ 七一五万四四七一円
喜久子は、本件取引日に受領した額面一億七〇〇〇万円の小切手により古知谷が原告ほか五名に対して負担していた総額一億七〇〇〇万円の債務を返済しているが、これは本件不動産等の譲渡価額一億七〇〇〇万円から支払われたものであり、かつ、そのうち九五三九万二九五四円は(2)のとおり原告に帰属するものであるから、原告が本件事業年度の益金に算入しなかった九五三九万二九五四円は原告が喜久子に対して貸し付けたものである。
したがって、原告の右貸付金九五三九万二九五四円について、所得税法基本通達三六-四九を引用し、別紙4(2)のとおり、年一〇パーセントの利率で本件取引日の翌月から本件事業年度末までの九か月分の利息相当分を算出すると前記のとおりになる。
(二) 法人税額 七〇五一万八三〇〇円
次の(1)の所得金額に対する法人税額に、(2)の課税留保金額に対する法人税額を加算し、そこから(3)の所得税額の控除額(国税通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数金額を切り捨てたもの)を控除すると右のとおりになる。
(1) 所得金額に対する法人税額 七〇〇三万〇四〇〇円
国税通則法一一八条一項により前記(一)の原告の所得金額の一〇〇〇円未満の端数金額を切り捨てた金額である一億七七二七万六〇〇〇円に、法人税法(昭和六三年法律第一〇九号による改正によるもの)六六条一項、二項に規定する税率を乗じて算出すると右のとおりになる。
(2) 課税留保金額に対する法人税額 二九七万七七〇〇円
原告は、法人税法二条一〇号に規定する同族会社に該当するから、同法六七条一項により留保金額に対して法人税が課されるところ、本件各事業年度の所得金額のうち、留保された金額一億七七一九万三〇一五円(申告に係る金額七四六四万五五九〇円に前記(一)(2)及び(3)の計上漏れ金額の合計一億〇二五四万七四二五円を加算したもの)を基礎として算出された課税留保金額二九七七万七〇〇〇円を基に、法人税法六七条により、これに対する法人税額を算出すると右のとおりになる。
(3) 所得税額の控除額 二四八万九七九四円
原告の本件事業年度の法人税確定申告書に記載されている金額である。
(三) 重加算税賦課決定処分
原告は、意図的に契約内容を変更する方法を利用して不当に法人税課税を回避することを試み、本件不動産等の譲渡価額六億円のうち四億三〇〇〇万円のみを譲渡価額とし、残り一億七〇〇〇万円を古知谷がサン・コウエイから同額の金員を借り入れたものと仮装することにより、原告が本件事業年度の益金に算入すべき譲渡価額九五三九万二九五四円を隠蔽して申告したものであるから、右は、国税通則法六八条一項に規定する国税の課税標準等又は税額等の計算の根拠となるべき事実の一部を隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したときに当たる。
したがって、被告は国税通則法六八条一項を適用してこれらの事実に係る部分の税額を計算の基礎として、原告に対し重加算税の賦課決定をした。
(四) 過少申告加算税賦課決定処分の根拠
被告は、原告が納付すべき税額のうち重加算税の対象とされた税額以外の税額を原告が過少に申告したことに関し、国税通則法六五条に基づき計算した金額を過少申告加算税として賦課決定した。
(五) まとめ
以上のとおりであるから、右(二)の税額の範囲内でされた本件更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。
二 原告
1 本件変更合意の存否について
原告及び古知谷は本件取引日にサン・コウエイとの間で本件変更合意をした。
本件変更合意が成立したことは以下の点から明らかである。
(一) 本件売買契約は、平成元年一一月二八日の成立当時は未だ確定的な合意内容ではなかった。すなわち、古知谷に関して、営業権を譲渡するか、古知谷の会社自体を譲渡(株式を譲渡)するかは、いまだ確定的ではなく、後日の協議に委ねられていた。
(二) 本件変更合意成立の際には、合意当事者の各代表者以外にもサン・コウエイの取締役藤田喜久子(以下「藤田」という。)、司法書士井上弘一事務所の布川淳三(以下「布川」という。)、原告代表者の長男である佐藤裕喜(以下「裕喜」という。)及び加藤税理士が同席し、これを確認している。
(三) サン・コウエイは、本件取引日に売買残代金五億四〇〇〇万円の支払のため同額面の信用金庫振出しの自己宛小切手一通を事前に用意して持参していたが、本件変更合意が成立したことから用意していた右小切手を使用せず、原告に対し本件不動産等の残代金として額面三億七〇〇〇万円の自社振出小切手一通を、古知谷に対し貸付金として額面一億七〇〇〇万円の自社振出小切手一通を、それぞれ新たに振り出して交付している。
この小切手による支払に対し、原告及び古知谷はそれぞれサン・コウエイに対し領収書を発行しているが、このうち原告発行の領収書の但書欄には「別途契約に依る残金」と記載されているのに対し、古知谷発行の領収書の但書欄は空欄のままである。
以上により、原告が本件不動産等の譲渡対価として受領した金員は、手付金六〇〇〇万円及び右の売買残代金三億七〇〇〇万円の合計の四億三〇〇〇万円のみであることは明らかである。
(四) 古知谷は、サン・コウエイから貸付金として受領した額面一億七〇〇〇万円の小切手を古知谷の銀行口座に入金し、その後、同金額を口座から出金して、喜久子ほか五名の債権者にそれぞれ弁済し、各債権者に対する債務をサン・コウエイに対する借入金債務に振り替え、当該会計処理を含む会計帳簿等をサン・コウエイに引き継いだ。そして、古知谷の代表取締役、取締役及び監査役の全員は本件取引日に辞任し、東一ほかサン・コウエイの関係者が新たに役員に就任した。
(五) 古知谷の全株式は、本件取引日にサン・コウエイに無償で譲渡された。
2 所得金額及び法人税額の算出根拠
本件不動産等の譲渡価額は、本件変更合意により四億三〇〇〇万円になった。当初の譲渡価額六億円との差額一億七〇〇〇万円は古知谷がサン・コウエイから借り入れたものであって、本件不動産等の対価ではない。
また、原告が喜久子ないし古知谷に九五三九万二九五四円を貸し付けた事実は存在せず、したがって未収利息が発生する余地もない。
したがって、原告の本件事業年度の所得金額は、原告のした申告のとおり七四七二万九三四三円であるから、被告がした更正処分のうち右申告額を超える部分は違法である。また、これに伴い重加算税及び過少申告加算税の各賦課決定処分も違法である。
第四争点に対する当裁判所の判断
一 本件変更合意の存否
1 前記争いのない事実、証拠(甲一ないし八、一〇の一ないし甲二二、乙一の一ないし乙一五、一七、証人東一、証人裕喜、原告代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。
(一) 原告は、昭和三八年一一月に喜久子の夫佐藤一道(以下「一道」という。)らにより設立された会社であり、旅行の斡旋業や不動産賃貸業等を営んでいた。
他方、古知谷は昭和四五年八月に一道らにより設立され、別紙1の<1>ないし<15>記載の各土地建物を原告から賃借して庭園等を整備し、料理旅館古知谷(以下「本件旅館」という。)を経営していた。
昭和六〇年三月に一道が死亡した後は、喜久子が古知谷の代表取締役となってこれを経営していたが、同社は昭和六一年八月から平成元年七月ころまでの間、毎年約一〇〇〇万円から一五〇〇万円程度の赤字の出る状態であった。また、同社の平成元年七月当時の主要な資産は、建物、建物付属設備、構築物及び什器備品で合計二四八七万四二三七円であった。
喜久子は同社の資金繰りが円滑にいかなくなったことや、老齢の家人に対する世話の疲れから、平成元年夏ごろには本件旅館の売却を望むようになり、知人の東に同旅館の購入希望者の紹介を依頼していたところ、その話が二谷晃吉(以下「二谷」という。)、株式会社三協リベラル(以下「三協リベラル」という。)の代表取締役である山腰修三(以下「山腰」という。)へと伝わり、同人を介して平成元年一〇月末頃、サン・コウエイの代表者の東一から代金六億円での買い取りの申し入れを受けた。
平成元年一一月九日、東一、サン・コウエイの常務取締役の藤田、東一が経営している飲食店の料理人、旅行関係者等、サン・コウエイ側から七、八名が本件旅館を訪問し、喜久子、裕喜、佐藤美和子、佐藤道喜、加藤税理士事務所の辻井、本件売買の仲介をした東らが対応した。東一の希望は、原告所有の土地建物のほか、本件旅館の営業、さらには古知谷をも譲り受けたいというものであったが、その席では喜久子が古知谷を譲る決心がつかず、その点は後日協議することになった。
裕喜はこの契約について、友人の佐藤成雄弁護士(以下「佐藤弁護士」という。)に契約書案を見せて相談したところ、同弁護士から同月二一日、要旨次の助言を得た。
<1>原告とサン・コウエイとの不動産売買に古知谷の名が出るのはおかしい。相手方と古知谷との間に何らかの取引があるのであれば、別途契約書を作成する必要がある。<2>古知谷が売れるものは備品を除いては物件として特にないが、二〇年間の営業実績とそれに伴う信用、知名度があり、これらはとても大きな価値を有する。<3>古知谷に金が入るようにすれば、古知谷が喜久子らに対して債務を負担している関係で所得税がかからない。<4>古知谷は原告が所有する土地建物を借りて旅館業を営んでいるから、原告がその土地建物を売るのであれば、古知谷に相当額の営業補償金を支払い、立退きをしてもらわなければならない。<5>古知谷の株式を相手方に譲渡する方法がある。この場合、古知谷は経理上赤字会社であるので受取人には何らの税金もかからない。<6><5>は、古知谷の喜久子ら個人に対する債務を完済した後にしなければならない。これについては、例えば、次の経営者に銀行から債務分の金を借りてもらい、個人への債務の返済と、不動産明渡とを同時に決済する方法がある。<7>古知谷と第三者との間で交わされた契約がある場合、権利関係に変更がある旨の同意を取らなければならない。これは、個人である喜久子等が連帯保証人としてそれらの契約に関係している場合是非とも必要である。
そして、同日、裕喜が右の内容をメモした書面をさらに加藤税理士に渡して相談したところ、同税理士から右の<6>の方針で行くよう助言された。
(二) 同年一一月二八日、原告及び古知谷はサン・コウエイとの間で、原告及び古知谷が本件不動産等を代金六億円で売り渡す内容の本件売買契約を締結し、サン・コウエイから手付金六〇〇〇万円を受領し、契約書(乙一の一、二)を作成した。本件売買契約書には、要旨次の内容が記載された覚書(本件覚書)が付加されている。
(1) 取引期日は平成二年一月二六日を最終決済日とする。もし、甲(原告及び古知谷)、乙(サン・コウエイ)合意の上ならば、取引期日を早めることも可能である。
(2) 不動産等売買金額の内訳
ア 土地代 四億三〇〇〇万円
イ 建物代 一億二〇〇〇万円
(内訳)
建物 四一三六万一一五九円
建物付属設備 一七五六万七三三三円
構築物 五〇〇〇万円
什器備品 一一〇七万一五〇八円
ウ 営業権 五〇〇〇万円
エ 消費税 三六〇万円
オ 備品のリース関係及び旅行業務取引契約は平成二年一月一日をもって買主側に移行する。
カ 古知谷を買主側に譲渡する件は甲(原告及び古知谷)乙(サン・コウエイ)合意の上、後日その内容について協議するものとする。
(3) 上記覚書の内容については甲(原告及び古知谷)と乙(サン・コウエイ)に取引期日までに修正の必要があれば協議の上誠意をもって解決するものとする。
(三) 平成元年一二月八日、加藤税理士が本件売買契約を仲介した一人である二谷あてに、売買代金を四億円とし、古知谷が債務を返済後譲り渡すなど契約内容の一部を変更する案を内容とする書面(甲一八)を送付した。
(四) 平成二年一月二六日(本件取引日)、サン・コウエイの事務所に本件取引のため関係者が集まった。出席したのは、売主側が喜久子、裕喜、加藤税理士及び第一勧業銀行の行員、買主側が東一、サン・コウエイの常務藤田及び京都銀行の行員らであり、他に、仲介業者として山腰及び司法書士事務所の布川らが同席した。
東一は、額面五億四〇〇〇万円の京都信用金庫本店振出しに係る自己宛小切手を用意していたが、原告側の要請で、この自己宛小切手の代わりに、サン・コウエイの自社振出しによる額面三億七〇〇〇万円及び一億七〇〇〇万円の各小切手で代金を支払い、前者について原告作成名義の領収書(但書欄に「別紙契約に依る残金」の記載がある。)を、後者について古知谷作成名義の領収書(但書欄空欄)を受領した。そして、サン・コウエイ側からの要望により、原告及び古知谷側は右の二通の小切手の銀行への入金を、東一が当初用意していた信用金庫振出しの自己宛小切手を現金化した後にすることにした。
(五) 喜久子は、(四)の額面三億七〇〇〇万円の小切手を同月二九日、第一勧業銀行百万遍支店の原告名義の普通預金口座に入金し、原告の会計処理上、これを本件不動産等の譲渡対価として本件事業年度の益金に算入した。
また、原告所有であった土地及び建物については、平成二年一月二六日付け売買を原因として同月二九日、原告からサン・コウエイへの所有権移転登記がされた。
喜久子は(四)の額面一億七〇〇〇万円の小切手を古知谷の裏書により現金化し、同月三〇日、次のとおり第一勧業銀行百遍支店の各預金口座に入金した。
(預金名義) (預金種別) (入金額)
<1> 佐藤喜久子 普通預金 五二三三万一八七〇円
<2> 佐藤美和子 普通預金 一七四二万七一七四円
<3> 株式会社京都リース 普通預金 二〇二四万六七八五円
<4> 原告 普通預金 三七〇七万五一七一円
<5> 佐藤裕喜 別段預金 四二九一万九〇〇〇円
<5>の預金は同年二月一日に解約され、同日、裕喜へ二五八一万九〇〇〇円が、佐藤道喜へ一七一〇万円がそれぞれ送金された。
以上により、古知谷の債権者である原告、株式会社京都リース及び喜久子ら個人に対する借入金及び未払金の返済がなされた。
そして、喜久子は古知谷の右各債権者に対する債務総額一億八〇四六万五二六七円を会計帳簿上サン・コウエイに対する債務(借入金)一億七〇〇〇万円に振り替え、その差額一〇四六万五二六七円の借入れ残については債権者から債務免除を受けた。
その後古知谷の全株式は平成二年一月二六日付けで喜久子らからサン・コウエイへ譲渡された。また、古知谷の役員は同日付けで代表取締役が喜久子から東一に変わり、その余の役員も東一側の者に変更され、原告所有の不動産の所有権移転登記と同日である同年一月二九日付でその旨の登記がされた。
同年二月中には、古知谷の会計帳簿が東一へ引き継がれた。右帳簿には、サン・コウエイから古知谷に対する平成二年二月七日付けの貸付金一億七〇〇〇万円が記載されていたため、東一は、会社の税理士を通じて加藤税理士に抗議をしたが、受け入れられなかった。
東一は同年三月一日付けで古知谷の増資を行い、東一らサン・コウエイ側の関係者が新たな株主となった。
同年四月一七日、加藤税理士から三協リベラルあてに「京洛観光企画(株)不動産等売買契約書の件」と題し、要旨次の事項を依頼する書面がファックスで送られ、東一が受領した。<1>売主から株式会社古知谷を削除する。<2>第一条の売買価格を四億三〇〇〇万円に訂正する。<3>特約条項を削除する。<4>売買契約者株式会社古知谷を削除する。<5>本件覚書の全文を削除する。
しかし、東一はこの変更の申し出を拒否した。
以上の事実が認められる。
2 右の認定事実を前提に以下本件変更合意の存否について判断する。
(一) まず、本件変更合意が成立したとする原告の主張に一応沿う証拠ないし事実として以下の各点が挙げられる。
(1) 証人裕喜及び原告代表者本人は「取引の当日、加藤税理士が、本件変更合意の内容についてサン・コウエイ側に申し入れをしたところ、最初は相手方の意見がまとまらないようであったが、一時間半程度して東一が了解した。」旨供述する。
また、甲九(加藤税理士の陳述書)及び一二(裕喜の陳述書)中にも原告の主張に沿う部分が存する。
(2) 本件売買契約は、平成元年一一月二八日の成立当時は古知谷をどのような形でサン・コウエイに譲渡するかは後日の協議に委ねられることになっていたものであり、この点において契約内容が一部未確定の状態であった。
(3) 古知谷の喜久子らに対する債務を返済した後、同社を譲渡する案は、裕喜等原告側が本件売買契約成立前から検討しており、加藤税理士が、仲介者の一人である二谷に対して変更の案をファックスで送っている。
(4) サン・コウエイは、本件取引日に売買残代金五億四〇〇〇万円の支払のため同額面の信用金庫振出しの自己宛小切手一通を事前に用意して持参していたが、結局同小切手を使用せず、額面三億七〇〇〇万円と額面一億七〇〇〇万円の自社振出しの各小切手で決済し、前者については原告の領収書(但書欄に「別紙契約に依る残金」の記載がある。)、後者については古知谷の領収書(但書欄空欄)を受領している。
(5) 古知谷の喜久子ほか五名の債権者に対する債務をサン・コウエイに対する債務に振り替える会計処理(本件変更合意に沿った処理)を行った会計帳簿等がサン・コウエイに引き継がれている。
(二) しかし、以下の各点に照らすと右の(1)の供述や陳述書の内容はにわかに採用することができず、また、右の(2)以下の事実等から本件変更合意の存在を推認することはできない。むしろ、以下の各点を総合すれば本件変更合意はなかったものと認められる。
(1) 証人東一の証言は本件変更合意の成立を明確に否定するものであり、右供述は裁決の審査手続等から一貫している。
甲九(加藤税理士の陳述書)は、本件変更合意の成立を肯定する内容のものであるが、加藤税理士は、裁決の審査手続においては本件取引の履行後に本件契約書の内容を変更する文書を作成して原告に渡したが、その後は関与していないし、文書の内容、作成時期等は覚えていない旨、本件変更合意の成立を否定する趣旨とみられる陳述を行っている(乙一六)ことから、にわかに措信し難い。
のみならず、本件取引日に中立的な立場で立ち会った布川は、裁決の審査手続において、本件変更合意は知らない旨陳述している(乙一六)。
(2) また、本件取引日である平成二年一月二六日は、本件売買契約の内容を変更するために改めて設定された日ではなく、本件売買契約に基づく取引内容を履行するため本件売買契約書によって設定されていた日にすぎない。このような日に、前記(一)(1)の証人裕喜及び原告代表者本人の供述のように、サン・コウエイ側が本件取引日の当日一時間半程度検討しただけで、その場で、本件変更合意のような契約内容を大きく変更する合意を了解したとするのはいかにも不自然である。
しかも、本件変更合意は契約の重要な部分を変更する内容であるのに、これを直ちに書面化せず、合意がなされたとする時から三か月近く経った平成二年四月一七日にようやく加藤会計事務所から山腰宛のファックスで、契約書の内容の変更の申し入れをしているというのは甚だ不自然である。特に、前記1の認定事実によれば、本件取引日には、加藤税理士や司法書士事務所の事務員が立ち会っており、また、裕喜は、その前から弁護士に相談するなど契約について慎重に対処する姿勢で臨んでいたのであるから、このような点からしても右の経緯は容易に理解し難い。
また、仮に本件変更合意に基づく契約書の変更には時間がかかるからその点は後日にするとの合意がなされたと仮定しても、少なくともサン・コウエイから古知谷に対する一億七〇〇〇万円の借用書が作成されていないことや、変更内容についてのメモ等の書面も存在していないのは極めて不自然である。
(3) さらに、本件変更合意の内容中、サン・コウエイから古知谷への一億七〇〇〇万円の貸付けは、その後古知谷の株式がサン・コウエイへ譲渡されていることと併せると、実質的には、サン・コウエイが右の金額で、古知谷を買い取ったことに等しいが、古知谷は、前記1(一)で認定したとおり、主要な固定資産の総額が二四八七万四二三七円で、経営面では毎年一〇〇〇万円から一五〇〇万円の赤字を出している会社であるから、このような会社に対し、一億七〇〇〇万円の評価をすることは、常識の範囲を超えているといわざるを得ない。
(4) 前記(一)(2)の点については、なるほど、本件売買契約は未確定部分を有していたといえる。しかし、この未確定部分が代金額に変動を及ぼすようなものであるとの認識を契約当事者が有していたとするならば、本件売買契約締結時には代金額も決定しないのが自然であるのに、これについては合意がなされていたのであるから、右の未確定部分は代金額の変更までを許容する趣旨ではなかったとみるのが自然かつ合理的であるから、このような未確定部分があったことは本件変更合意のような代金額を大幅に変更する合意の成立を裏付ける説得力ある根拠とはなり得ない。
また、前記(一)(3)の点については、原告側が本件変更合意の内容にほぼ沿った案を検討していたことは窺われるが、本件全証拠によっても、右の案が東一に伝わり東一との間で検討が重ねられた事実は認められないから、右の事実が直ちに本件変更合意の成立を強く推認させることにはならない。
また、前記(一)(4)の経緯は、喜久子らが古知谷に対して有する一億七〇〇〇万円の債権について原告が主張するような貸付金でなく、本件売買契約の代金の一部で返済を受けたことにする(売買代金中古知谷が受領する分を一徳七〇〇〇万円とする)ためということでも十分説明がつくものであり、但書欄の記載の相異も額面一億七〇〇〇万円の小切手に対する領収書の方は単に記載がないだけである上、二通の領収書の発行主体が異なるのであるから、右の相異に格別大きな意味があるとはいえない。また、サン・コウエイが事前に用意していた信用金庫振出しの自己宛小切手に代えて、自社振出しの小切手で決済したことは、商取引上一般的なことではないが、右のとおり、喜久子らの都合で東一に申し入れたとすると、このことは東一の側に特段の不利益を与えるものではないから(信用金庫の自己宛小切手を使わないことにする場合には、同小切手の振り出しによる預金の減少を補填するまでの間、これに代えて振り出した小切手の入金を暫時待ってもらう必要が生ずる不都合があり得るが、この点は、前記1(四)認定のとおり、原告側との間で合意がなされており、東一の側に不利益が生じていない。)、東一がこれに応じたとしても、それが本件変更合意の成立を特に裏付けることにはならない。
さらに、前記(一)(5)については、前記認定のとおり、東一が当該会計帳簿を引き継いだあと、その帳簿上本件変更合意に沿った会計処理がなされていることについて原告に対し抗議している事実が認められるから、この帳簿の引き継ぎをもって本件変更合意の存在の根拠にすることはできない。
二 所得金額及び法人税額等
1 所得金額
本件不動産等の売買に関しては、一のとおり、原告が主張する本件変更合意は存しないから、本件売買契約の本件不動産等の譲渡価額は六億円である。
原告の申告所得金額は、次の(一)のとおりであり、これには後記(二)(1)及び(三)の計上漏れがあるから、これを加算した金額が本件事業年度における原告の所得金額となり、その合計額は別紙5(1)の「裁決後の額B」欄の1欄記載のとおり一億三〇二一万〇三一六円となる。
(一) 申告所得金額が七四七二万九三四三円であることは当事者間に争いがない。
(二) 固定資産税売却益の計上漏れ
(1) 建物等の譲渡価格
本件覚書に記載された「土地代四億三〇〇〇万円」とは、原告が本件土地を同価額で譲渡することであるが、「建物代一億二〇〇〇万円」については、本件建物等及び古知谷の建物等の売買価格が区分して記載されていないことから、この点については、原告及び古知谷のそれぞれの帳簿価額の合計額に占める当該物件の割合を乗じて原告に帰属すべき譲渡価額を算出するのが合理的であり、これによると、別紙3のとおり原告に帰属すべき譲渡価額は五一六一万〇二〇八円となる。
そうすると、原告に帰属すべき本件不動産等の譲渡価格の合計は四億八一六一万〇二〇八円となり、これが計上漏れとなる。
(2) 「営業権」の譲渡価額
本件売買契約においては「営業権」の価格を五〇〇〇万円としている。
この「営業権」の趣旨について、証人東一は、漠然と古知谷の株式や古知谷が国際観光連盟や旅行会社等との関係を引き継ぐためのものと認識していた旨供述している。また、前記認定のとおり本件売買契約締結日には「古知谷の譲渡」に関してはその内容が未確定であったところ、証人東一の供述によれば、本件取引日においてもこの点については詳細に話を詰めていないことが窺われる。
しかし、証人東一の供述に、前記認定のとおり本件取引日の後に古知谷の株式がサン・コウエイに譲渡されている事実(これにより古知谷自体がサン・コウエイに譲渡されたことになるから古知谷からサン・コウエイへの営業権の譲渡は考えられない。)を総合すると、当事者の意思として、古知谷に関する譲渡は、同社の全株式の譲渡(会社の譲渡)の方法によることに確定したとみることができ、そうすると、その時点で、右の「営業権」も実質的には古知谷の全株式を指すことになったと認定するのが合理的である。
そうすると、「営業権」の売主は古知谷の株主であるから、その代金である五〇〇〇万円は原告に帰属すべき売買代金とは認められない。
(三) 未収利息の計上漏れ
喜久子は、本件取引日に受領した額面一億七〇〇〇万円の小切手により古知谷が原告ほか五名に対して負担していた総額一億七〇〇〇万円の債務を返済しているが、右は本件不動産等の譲渡価額一億七〇〇〇万円から支払われたものであり、かつ、そのうち五一六一万〇二〇八円は(二)のとおり原告に帰属するものであるから、原告が本件事業年度の益金に算入しなかった五一六一万〇二〇八円は、原告が喜久子に対して貸し付けたものとみるべきである。
したがって、原告の右貸付金五一六一万〇二〇八円について、前記認定事実のとおり、右金員が第一勧業銀行百万遍支店の喜久子の普通預金口座に入金された平成二年一月三〇日から本件事業年度末までの九月分(一月未満の日数は切り捨て)の利息相当額を計算する(乙一六によれば、平成二年一月当時の市中銀行の無担保貸付けの利率は年一〇・四パーセントであることが認められること及び所得税法基本通達三六-四九から利率を年一〇パーセントとして計算する)と、三八七万〇七六五円となり、これが計上漏れとなる。
2 差引所得に対する法人税額
次の(一)の所得金額に対する法人税額に、(二)の課税留保金額に対する法人税額を加算し、そこから(三)の所得税額の控除額(国税通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数金額を切り捨てたもの)を控除すると別紙5(1)の「裁決後の額B」欄の11欄のとおり五〇九〇万四九〇〇円となる。
(一) 所得金額に対する法人税額
国税通則法一一八条一項により前記1の原告の所得金額の一〇〇〇円未満の端数金額を切り捨てた金額である一億三〇二一万円に、法人税法(昭和六三年法律第一〇九号による改正によるもの)六六条一項、二項に規定する税率を乗じて計算すると別紙5(1)の「裁決後の額B」欄の2欄のとおり五一二〇万四〇〇〇円となる。
(二) 課税留保金額に対する法人税額
乙二及び弁論の全趣旨によれば、原告は法人税法二条一〇号の同族会社に該当することが認められるから、同法六七条一項により留保金額に対して法人税が課されることとなる。
そして、1及び2(一)の認定事実、乙一六及び弁論の全趣旨によれば、本件事業年度の課税留保金額は、別紙5(1)の「裁決後の額B」欄のとおり二一九〇万七〇〇〇円となることが認められ、これを基に法人税法六七条により課税留保金額に対する法人税額を算出すると、同8欄記載のとおり二一九万〇七〇〇円となる。
(三) 所得税額の控除額
弁論の全趣旨により、別紙5(1)の「裁決後の額B」欄の10欄記載のとおり二四八万九七九四円(原告の本件事業年度の法人税確定申告書に記載されている金額)であると認められる。
3 重加算税賦課決定処分
前記認定事実によれば、本件建物等の譲渡価格は四億八一六一万〇二〇八円であるところ、原告は一億七〇〇〇万円を古知谷の借入金とすることにより五一六一万〇二〇八円を隠蔽して、本件事業年度の所得金額を過少に申告したものと認められるから、右は、国税通則法六八条一項に規定する国税の課税標準等又は税額等の計算の根拠となるべき事実の一部を隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出したときに当たる。
そして、乙一六及び弁論の全趣旨によれば、右の事実に係る部分の税額(国税通則法六八条一項)については、加算税の基礎となる税額が別紙5(2)の重加算税の「裁決後の額B」欄の<1>欄記載のとおり二一二万五〇〇〇円となることが認められ、右に対する加算税の額は同<3>欄記載のとおり七四三万七五〇〇円となる。
4 過少申告加算税賦課決定処分
乙一六及び弁論の全趣旨によれば、原告が納付すべき税額のうち重加算税の対象とされた税額以外の税額を原告が過少に申告したことに関する国税通則法六五条に基づく過少申告加算税については、加算税の基礎となる税額が別紙5(2)の過少申告加算税欄の「裁決後の額B」欄の<1>欄記載のとおり一六一万円となることが認められ、右に対する加算税の額は同<3>欄記載のとおり一六万一〇〇〇円となる。
5 以上によれば、本件事業年度の税額及びこれに関わる加算税は、本件各処分に対する裁決による認定のとおりであると認められる。
第五結論
以上によれば、本件各処分のうち裁決による一部取消し後の部分は、前記第四の二1の所得金額の範囲内の処分であって違法な点はなく、原告の請求はいずれも理由がないことに帰するからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大出晃之 裁判官 芦澤政治 裁判官府内覚は転補につき、署名押印することができない。裁判長裁判官 大出晃之)
別紙1
売買不動産明細書
<省略>
別紙2
課税の経緯(京洛観光企画株式会社)
<省略>
別紙3
本件建物売買価額計算表
<省略>
別紙4
<省略>
別紙5
(1) 課税標準等及び税額等の計算
<省略>
(2) 加算税の額の計算
<省略>